あなたは、
- 子どもの感染症にはどのような種類・症状があるのか知りたい
- 子どもに多い感染症の特徴を知り、対応できるようにしておきたい
- 子どもに多い感染症の登園・登校基準を把握しておきたい
と、お考えではありませんか?
子どもは感染症にかかりやすいと言われており、親としてどんなことに気を使う必要があるのか不安ですよね。
これからお子さんが入園・入学されるにあたり、登園・登校基準や予防接種について知っておきたいと考える方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、季節別に流行る感染症には以下の種類があります。
この記事を読めば、季節毎の流行しやすい子どもの感染症とその概要が分かります。
また、症状や注意すべきポイント、予防接種の有無や時期についても理解でき、今後の参考にできます。
この記事では、
1章で【季節別】子どもに多い感染症一覧、
2章で春に多い子どもの感染症、
3章で夏に多い子どもの感染症、
4章で秋に多い子どもの感染症、
5章で冬に多い子どもの感染症、
6章では通年で起こる子どもの感染症、
7章で登園・登校の目安について詳しく解説します。
この記事を読んで、子どもに多い感染症の特徴を知り、いざというときに備えましょう。
1章:【季節別】子どもに多い感染症一覧
子どもに多い感染症を季節別に分類した一覧表は以下のとおりです。
病名 | 潜伏期間 | 症状 | 予防接種 | |
春 | 麻疹 (はしか) | 10~12日 | 38℃程度の発熱とかぜ症状が2〜4日続く。咳・鼻水・目の充血など。その後39℃以上の高熱、発疹が出現。 | 麻疹・風疹混合 (MR)ワクチン |
風疹 (ふうしん) | 14~21日 | 全身に赤い発疹、リンパ節の腫れ、発熱を3つが出現。 | 麻疹・風疹混合 (MR)ワクチン | |
流行性耳下腺炎 (おたふく風邪) | 14~21日 | 発熱、耳下腺の腫れ、痛み | 生ワクチン | |
水痘 (みずぼうそう) | 10~21日 | 38℃前後の高熱と、全身に赤い発疹が出現。発疹→水ぶくれ→かさぶたの段階をたどる。強いかゆみが特徴。 | 生ワクチン | |
伝染性紅斑 (りんご病) | 10~20日 | 両頬がりんごのように赤くなり、手足にも出現。かぜ症状。 | なし | |
夏 | 咽頭結膜熱 (プール熱) | 5~7日 | のどの痛み、目の充血、39℃前後の発熱が数日から1週間程度続く。 | なし |
手足口病 | 3~5日 | 手・足・口腔内の水疱と軽度の発熱。 | なし | |
ヘルパンギーナ | 2~4日 | 発熱、のどの痛み、のどの発疹・水疱で飲食を受け付けなくなり、脱水になることも。 | なし | |
流行性角結膜炎 (はやり目) | 8~14日 | さらさらした目やに、目のかゆみ、ゴロゴロ感、涙目など。 | なし | |
とびひ | 2~10日 | 虫刺されやあせもなどの掻きこわしから、水ぶくれや膿が出て新しい皮膚に広がる。 | なし | |
秋 | マイコプラズマ肺炎 | 14~21日 | かぜ症状、痰のない咳が長く続くのが特徴。 | なし |
RSウイルス 感染症 | 4~6日 | かぜ症状。多くは軽症で自然軽快。 | なし | |
ノロウイルス 感染症 | 24~48時間 | 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、軽度の発熱 | なし | |
冬 | インフルエンザ | 1~3日 | 悪寒、38~39℃前後の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状とかぜ症状。 | 不活化ワクチン |
ロタウイルス 感染症 | 2~4日 | 嘔吐、下痢(しばしば白色便)、発熱 | 弱毒ワクチン | |
溶連菌感染症 | 2~5日 | 発熱、のどの痛み、発疹、イチゴ舌。 | なし | |
通年 | 突発性発疹 | 約10日 | 突然の高熱が3~4日続くが、比較的機嫌が良いことが多い。解熱と同時にお腹や背中に発疹が出現。 | なし |
百日咳 | 7~10日 | 2~3週間の軽いかぜ症状の後に、激しい咳き込み(コンコンヒューヒュー)が長く続く。 | 4種混合ワクチン(DPT-IPV) |
2章:春に多い子どもの感染症
春に多い子どもの感染症は以下のとおりです。
- 麻疹(はしか)
- 風疹(ふうしん)
- 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
- 水痘(みずぼうそう)
- 伝染性紅斑(りんご病)
それぞれ説明します。
2-1:麻疹(はしか)
麻疹(はしか)は、感染力が非常に高いうえに、重い病気です。
免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症すると言われています。
麻疹が疑わしい場合は、事前にかかりつけ医や医療機関に電話をして、受診しても良いか確認しましょう。
移動の際は、なるべく公共交通機関の利用を避けてください。
2-2:風疹(ふうしん)
麻疹(はしか)に似た症状で、軽い経過です。
3~4日で治るので「3日はしか」とも呼ばれます。
2-3:流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
耳下腺などの腫れは通常48時間以内にピークを認めます。
感染力がかなり強いですが、感染しても症状がでない(不顕性感染)割合も30~35%程度と多いです。
2-4:水痘(みずぼうそう)
数日にわたって新しい発疹が出現します。そのため、さまざまな段階の発疹が混在するのが特徴です。
水ぶくれの状態ではかゆみが強く、掻きむしることで傷口から感染します。
かさぶたになるまでは、感染する恐れがあるため、外出は控えましょう。
2-5:伝染性紅斑(りんご病)
頬が赤くなる1週間から10日後に微熱などの軽い風邪症状が出現します。この時期がもっとも感染力が高い状態です。
3章:夏に多い子どもの感染症
夏に多い子どもの感染症は以下のとおりです。
- 咽頭結膜熱(プール熱)
- 手足口病
- ヘルパンギーナ
- 流行性角結膜炎(はやり目)
- とびひ
それぞれ説明します。
3-1:咽頭結膜熱(プール熱)
かつてプールでの感染が多く見受けられたため、プール熱とも呼ばれています。
しかし、タオルの共有が減ったことで、プールでの集団感染は減りました。
プールや温泉施設を利用する前後では必ずシャワーを浴び、タオルは個別に使いましょう。
のどの痛みが強いため、食欲不振となる場合があります。
その際は、のどごしの良い食べ物や水分摂取を行い、脱水に注意しましょう。
3-2:手足口病
口内炎がひどく、飲食を受けつけなくなる場合があります。その際は脱水に注意しましょう。
また、以下のような特徴があります。
- 治った後でも比較的長い期間、飛沫や便などから排泄される場合がある
- 感染しても発症せず(不顕性感染)、ウイルスを排泄する場合がある
この特徴から、乳幼児が集団生活をする施設においては、感染の広がりを防ぐことは難しいです。
しかし、手足口病は比較的、軽症で治癒するため、これまで多くの人が子どもの間にかかって免疫をつけてきた感染症です。
3-3:ヘルパンギーナ
手足口病と同様、ヘルパンギーナも治った後も長期にわたってウイルスが排泄されます。
そのため、症状が出現しているときだけ登園を制限しても感染を阻止するのは難しいため、状態が良好であれば登園・登校して良いとされています。
3-4:流行性角結膜炎(はやり目)
感染力がとても強く、学校保健安全法上の学校感染症に指定されており、感染の恐れがなくなるまで出席停止とされています。
片目で発症しますが、目やにによる接触感染で両目に発症するケースが多いです。
最初に症状が出た目の方が、重症となる傾向があります。
目を手でこすらないようにしましょう。
また、家庭内での感染を防ぐために、タオルなどは共有せず、ティッシュなど使い捨てのものを使うのがおすすめです。
3-5:伝染性膿痂疹(とびひ)
虫刺されやあせもなどを引っ掻いた傷に細菌が侵入することで感染し、周囲の皮膚にどんどん広がっていきます。
広がっていく様子が、火事の飛び火に似ていることから「とびひ」と呼ばれます。
原因菌は正常な皮膚や粘膜などに存在する「黄色ブドウ球菌」と「溶血性連鎖球菌(溶連菌)」である場合が多いです。
とびひにかかってしまったら、最も大切なことは「清潔を保つこと」です。
最低でも1日2回、石けんやボディーソープを使ってシャワーできれいに洗い流しましょう。
4章:秋に多い子どもの感染症
秋に多い子どもの感染症は以下のとおりです。
- マイコプラズマ肺炎
- RSウイルス感染症
- ノロウイルス感染症
それぞれ説明します。
4-1:マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は熱が下がった後も長期にわたって咳が続くのが特徴です。
多くの人はマイコプラズマ肺炎に感染しても気管支炎程度で済みます。
小児では少ないですが、稀に肺炎となり重症化するケースがあります。
4-2:RSウイルス感染症
多くは軽症で自然軽快しますが、生後6ヶ月未満では重症化しやすく、入院管理が必要になる可能性があります。
そのため、例えば生後6ヶ月未満児のきょうだいで上の子がRSウイルスにかかってしまった場合、できる限り互いに接触しないよう注意しましょう。
4-3:ノロウイルス感染症
ノロウイルス感染症は突然の激しい嘔吐や下痢が特徴です。しかし、多くは1~2日で軽快に向かいます。
ただ、感染力は1週間程度~長いときで1ヶ月程度、糞便中に排出されます。
したがって、感染した後も衛生管理には注意しましょう。
ノロウイルス感染症は、アルコール消毒ではあまり効果がありません。
そのため、ノロウイルスが死滅する「次亜塩素酸ナトリウム」を使って消毒するようにしてください。
【コラム】ノロウイルスの消毒法
ハイターあるいはキッチンハイター(塩素濃度約5%)で次亜塩素酸ナトリウムの消毒液が作れます。
実際に感染してしまい、吐物や糞便の処理をする場合と、予防としてトイレ周辺を拭き取る場合で適切な濃度が違います。
【感染してしまった場合】
必要な塩素濃度 | 1,000ppm(0.1%)以上 |
作り方 | 水500ml に対しハイター約10ml(ペットボトルキャップ2杯分) |
【予防的に使いたい場合】
必要な塩素濃度 | 200ppm(0.02%)以上 |
作り方 | 水1,000ml に対しハイター約10ml(ペットボトルキャップ1杯分) |
5章:冬に多い子どもの感染症
冬に多い子どもの感染症は以下のとおりです。
- インフルエンザ
- ロタウイルス
- 溶連菌感染症
それぞれ説明します。
5-1:インフルエンザ
インフルエンザは毎年冬に大規模な流行がみられます。
任意で不活化ワクチンの予防接種ができるため、流行前の11月頃に接種しましょう。
5-2:ロタウイルス感染症
主な症状が嘔吐と下痢で、ノロウイルス感染症と似ていますが、ロタウイルス感染症の方が発熱を伴う場合が多く、重症度が高いと言えます。
ノロウイルスと同様、ロタウイルスは非常に感染力が高く、アルコールではあまり効果がありません。
また、症状が改善しても糞便中にウイルスが排出されます。
そのため、4章4-3ノロウイルス感染症で先述したような消毒法を活用しましょう。
ロタウイルス感染症は任意でワクチンが受けられます。
ワクチンの種類は2種類あり、いずれも生後14週6日までに初回の接種をする必要があります。
接種を希望する場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
5-3:溶連菌感染症
溶連菌感染症は抗生物質が有効で、適切な治療を受ければ1~2日ほどで快方に向かいます。
発疹も3~4日ほどで消失することが多いです。
しかし、受診せずに放置したり、解熱したからと途中で内服を中断したりすると、症状再発やリウマチ熱などを合併するリスクがあります。
したがって、溶連菌感染症が流行っていたり、疑わしい場合は、医療機関を受診しましょう。
6章:通年で起こる子どもの感染症
通年で起こる子どもの感染症は以下のとおりです。
- 突発性発疹
- 百日咳
それぞれ説明します。
6-1:突発性発疹
突発性発疹は子ども特有の風邪であり、生まれてから初めての高熱というケースも多いです。
感染しても症状が出ない「不顕性」の場合も含め、ほとんどの場合2歳頃までに感染します。
5歳以上で初感染するケースは稀です。
生まれて初めての高熱で不安も強く、判断に迷うこともあるでしょう。
以下のような症状がある場合は、もう一度受診しましょう。
- 3日以上の高熱
- 機嫌が悪い
- 元気がない
高熱による脱水に注意しましょう。
6-2:百日咳
百日咳は名前のとおり、長期間に渡って激しい咳が続きます。
激しい咳によって呼吸が難しくなり、窒息や肺炎などの合併症が致命的となる場合があるため、注意が必要です。
適切な治療を受けると、5~7日程度で感染力は落ち着きます。
7章:登園・登校の目安は医師に確認しよう
感染症を発症した場合の、登園・登校の目安は医師に確認しましょう。
たとえ症状が改善している場合でも、感染力は維持されている場合があるためです。
また、受診するかどうかの判断に迷った場合は、子ども医療電話相談事業(♯8000)を活用するのがおすすめです。
お住まいの都道府県窓口に自動転送され、小児科医師や看護師が適切なアドバイスが受けられます。
まとめ:子どもに多い感染症の流行時期を把握しておこう
子どもの感染症には流行時期があります。
流行時期を把握しておき、以下のような感染対策を早めにしましょう。
- マスクをする
- 手洗い・うがいを徹底する
季節別に流行る感染症には以下の種類があります。
■春
麻疹(はしか)
風疹(ふうしん)
流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
水痘(みずぼうそう)
伝染性紅斑(りんご病)
■夏
咽頭結膜熱(プール熱)
手足口病
ヘルパンギーナ
流行性角結膜炎(はやり目)
とびひ
■秋
マイコプラズマ肺炎
RSウイルス感染症
ノロウイルス感染症
■冬
インフルエンザ
ロタウイルス感染症
溶連菌感染症
■通年で起こる子どもの感染症
突発性発疹
百日咳
子ども特有の感染症は多くあり、集団生活を開始したばかりのときは何らかの感染症をもらってくる場合が多いです。
季節ごとに流行する感染症を事前に把握しておくと、いざというときに適切な対応ができて安心ですよ。
【参考サイト】
厚生労働省|感染症情報|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html
NIID国立感染症研究所|https://www.niid.go.jp/niid/ja/
公益財団法人眼科学会|https://www.nichigan.or.jp/public/disease/
東京都感染情報センター|https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/
【参考PDF】